転職の面談(面接)は、職務再現性×志望妥当性×カルチャーフィットを短時間で見極める場です。本稿では、志望動機/自己PR/逆質問/STAR法/オンライン面接/条件交渉までを網羅し、転職・転職サイト・転職エージェント経由の選考にも通用する「型」と実践手順をまとめました。
面談の目的と評価軸を先に押さえる
中途採用の評価は概ね①職務再現性(即戦力か)②志望妥当性(なぜこの会社・この職種か)③カルチャーフィット(価値観/働き方)の3軸で行われます。これに加えて、書類/ポートフォリオ/推薦情報を踏まえた整合性が見られます。「会社辞めたい」「仕事辞めたい」という感情だけで動くのではなく、退職理由→転職理由→志望理由が論理的につながるかが鍵です。
事前準備チェックリスト(10分で抜け漏れ防止)
- 求人票の再読(ミッション/スキル要件/評価指標)
- 企業リサーチ(事業KPI/収益源/競合/最近のニュース)
- 職務棚卸し(成果・役割・使用スキル・規模・難所・再現性)
- 退職理由→転職理由→志望理由の一貫ストーリー化
- 想定質問30(後述)への下書き/逆質問15の準備
- オンライン環境(静音/光源/背景/マイク/回線)
- 面談後のお礼メールテンプレ準備

志望動機は「Why業界」「Why職種」「Why当社」の三段構え
面談で最も差がつくのは志望動機。以下の3層を段落ごとに分けると一貫性が伝わります。
- Why業界:市場構造/課題/成長要因への理解(例:SaaSの定着率とLTV拡大)
- Why職種:自分の強みが価値に変わる理由(例:データ起点の提案→受注率+△%)
- Why当社:独自性×自分の再現性(例:ターゲット/プロダクト/働き方の合致)
NG:待遇面のみ/退職の愚痴中心/汎用テンプレ。OK:業界の解像度→職務の再現性→企業の独自性の順で、定量(%/件数/規模)を混ぜて語る。
職務経歴はSTAR法で「成果→再現性」を伝える
要素 | 要点 | 例(営業) |
---|---|---|
S:状況 | 前提/制約/規模 | 新規SaaS、競合A/B強い、担当30社 |
T:課題 | 達成すべき目標 | 四半期受注率+5pt、解約率▲1pt |
A:行動 | 自分の工夫 | 失注分析→CTA見直し→ABテスト実施 |
R:結果 | 数値/学び/再現 | 受注率+7.2pt、解約▲1.1pt、提案書テンプレ化 |
「何をしたか」よりなぜそう判断し、どう改善し、どう学んだかが評価されます。次の職場でも同じ判断ができる=再現性を意識しましょう。
想定質問30:意図と答え方のコツ
質問 | 面接側の意図 | 答え方の要点 |
---|---|---|
ご経歴の要約 | 論理性/要約力 | 結論→役割→成果→強み→志望先との一致 |
転職理由 | ネガの妥当性 | 現職の課題→努力→限界→学び→次で活かす |
退職時期 | 実現性 | 就業規則/引継ぎ/有給計画→現実的な日程 |
志望理由 | 解像度/熱量 | Why業界/職種/当社の3層構造 |
失敗談 | 誠実さ/学習能力 | インパクト→原因→対策→再発防止 |
強み・弱み | 自己認識 | 強み=根拠/貢献、弱み=対処策/改善中 |
給与希望 | 相場観 | 市場相場/職務範囲/貢献幅でレンジ提示 |
将来像 | 継続性 | 3年の成長仮説と成果定義 |
ネガティブな退職理由でも、事実→努力→限界→学びの順で話せば前向きに伝わります。どうしても退職手続きが難航しそうなら、退職手続きの段取りや公的手続きの準備を並行し、選考側に支障が出ない計画性を示しましょう。
逆質問テンプレ(相手の深層を引き出す)
- 評価:この職種の高評価者はどんな行動特性がありますか?
- オンボーディング:入社90日で期待される成果と支援体制は?
- 戦略:今期の最重要KPIと、足りていないリソースは?
- 文化:意思決定のスピードや失敗許容の考え方は?

オンライン面談の勝ちパターン
- 画角:目線水平、頭上2〜3cmの余白、斜め45度の補助光
- 音:マイクは口から20cm前後、入力レベルは-12dB付近
- UI:通知オフ、不要タブ/アプリを閉じる、メモは紙に
- ラグ対策:要点は短文、数字は繰り返す、「今の点を要約します」
条件・年収レンジの伝え方(交渉は“根拠×余白”)
希望年収は「市場相場+職務範囲+期待インパクト」でレンジ提示が基本。面談序盤は職務内容の確認を優先し、最終面談〜内定フェーズで「根拠と代替案」を持って交渉しましょう。
- 例:「現年収は◯◯万円、同規模ポジションの相場は◯◯〜◯◯万円。入社3〜6か月で◯◯の改善を再現できる見込みなので、◯◯〜◯◯万円を希望します」
- 代替案:固定+変動、SO/RSU、入社時一時金、リモート比率など
よくあるNGと言い換え例
NG表現 | 意図のズレ | 言い換え例 |
---|---|---|
「前職が最悪で…」 | 感情優位 | 「改善に努めましたが◯◯に限界があり、学びを次で活かします」 |
「何でもやります」 | 責任範囲不明 | 「まず◯◯領域で貢献し、隣接の◯◯へ拡張します」 |
結論が遠い | 要約力不足 | 「結論→理由→具体例→再現性」の順で30秒 |
当日の持ち物と段取り(チェックアウトリスト)
- 履歴書/職務経歴書(紙 or PDF)・作品/実績資料
- 身分証・メモ帳・黒ペン・予備バッテリー
- 開始10分前入室、氏名+目的の一言、終了時の要約
面談後:お礼メールと振り返りテンプレ
お礼メール(当日中):学び/関心が強まった点を1つに絞って記載。次アクション(課題提出/日程調整)があれば明記。
振り返り(各面談):想定外質問/弱かったエピソード/次回の改善1点。
まとめ:面談は「準備した人」から通る
転職の面談は、準備の質で結果が大きく変わります。志望動機の3層構造、STAR法の再現性、逆質問の深さ、オンラインの所作、条件交渉の根拠――これらを事前に整えれば、短時間でも自分の価値が伝わるようになります。転職サイトや転職エージェントの情報も活用しながら、面談→振り返り→改善のサイクルを回していきましょう。